アンテナ工事の際にブースターの設置は必要?選ぶ際の注意点・ポイントも解説

地デジを視聴するために必要なアンテナ工事は、必ずしもアンテナを設置するだけで視聴できるわけではありません。場合によっては、ブースターを使用しなければ地デジを視聴できないことがあります。今後、アンテナを設置・交換する際の参考となるよう、アンテナ工事におけるブースターの役割を知っておきましょう。

テレビアンテナにおけるブースター(増幅器)の役割とは?

ブースターとは、地上デジタル放送波・BS/CS放送波の信号を増幅し、より鮮明な画面でテレビを視聴できるようにするもので、電波を増幅する役割のある機器です。アンテナの受信可能範囲を超えた場所での視聴や、ケーブルや分配器を使うことによる電波の劣化に対応し、電波の強度を高めることができます。

たとえば、複数台のテレビを設置する際には、多くの場合で分配器を使いそれぞれへ電波を送りますが、分配器を使わないときの電波よりも弱くなってしまいます。具体的には、ノイズの発生や映像の劣化など、分配損失と呼ばれる現象ですが、ブースターを補助に利用することで対処が可能です。このように、ブースターには各機器が必要な強さまで電波を増幅・維持させる効果があります。

ブースターの種類

さまざまな種類のブースターが販売されていますが、大きく「屋外型ブースター」と「卓上型ブースター」の2つに分類されます。ブースターの設置を進める前に、それぞれの特徴について理解しておきましょう。

  • 屋外型ブースター

屋外型ブースターはアンテナの近くに設置するため、電波の増幅率が最も良いブースターのタイプです。ただし、アンテナの近くにブースターを設置する工事が必要となるため、アパートなどの集合住宅では許可が下りないことが多いので注意しておきましょう。設置は基本的に専門業者を呼び、屋根の上などアンテナが設置されている場所での工事となります。

  • 卓上型ブースター

卓上型ブースターは、テレビの近くに設置して使用するタイプのブースターです。複数のテレビを使用しているご家庭でよく使用されており、設置の仕方や故障の際の取り外し・交換も比較的かんたんで、気軽に設置できます。ただし、高性能で使いやすい卓上型ブースターも増えてきましたが、アンテナからの電波が微弱すぎる場合、十分に増幅ができないため、事前に電波状況の確認が必須です。

アンテナ工事の際にブースターの設置が必要な場合

アンテナ工事の際にブースターを設置すると料金が高くなる傾向にあるため、設置の判断は慎重にならざるを得ません。より適切な判断が行えるよう、アンテナ工事の際にブースターの設置が必要となる場合を確認しておきましょう。

発信基地の電波が弱い場合

アンテナの電波には受信レベルがあり、電波の送信所から遠ざかるほど弱くなります。そのため、地域によっては発信基地の電波が弱く、テレビの映りが悪くなる場合もありますが、ブースターを設置することで解決が可能です。

また、自宅内で分配器を使用している場合には、各部屋のテレビ端子まで配線されますが、その分配器の影響で電波が弱くなることがあります。

このように、アンテナで受信した電波レベルに問題がなくても、電波レベルが足りないというケースも想定しておかなければなりません。

地デジの受信電波が弱くなった場合

電波状況が弱いことが原因となり、特定のチャンネルが視聴できなくなった・映りが悪くなったなどの不具合が生じる場合も少なくないでしょう。こうしたトラブルの際にも、ブースターを設置して受信する電波を増幅させ、きれいな映像を視聴できるまでに回復する可能性があります。

複数台のテレビを使用したい場合

ご家庭で複数のテレビを視聴する際にも、ブースターを設置することで快適にテレビを視聴できるようになります。複数台のテレビを視聴するためには分配器を使用する必要がありますが、それと併せてブースターを設置し、分配の影響で弱くなってしまった電波を増幅させて補うことが可能です。

建物が受信の妨げとなっている場合

発信基地から近い場所に住んでいても、周囲に高い木や高層マンションが建っている環境では電波の受信が阻害されてしまいます。そのため、アンテナを設置した当初は問題なく視聴できていたのに、近くに大型ビルなどが建ってしまいテレビの映りの調子が悪くなったというケースもめずらしくありません。このような場合にも、ブースターを設置することで問題を解消できる可能性があります。

ブースターを選ぶ際にチェックしておきたいポイント

ブースターは種類だけではなく、製品により性能が細かく分かれています。ケースに応じて最適なブースターを設置するためにも、購入する製品を選ぶ際にチェックしておきたいポイントを覚えておきましょう。

増幅能力

ブースターを選ぶ際には、電波の弱さが選ぶ指針となるので現在の電波状況を知っておく必要があります。電波が弱い場合には、電波の増幅が強いブースターを選ぶようにしましょう。増幅度合いは、主に「利得」や「Gain」と表記されているもので、数値が大きいほど弱い電波でも映りが良くなります。

定格出力

ブースターの選び方で最も重視すべきポイントは、定格出力です。ブースターにより受信できる電波の上限が決まっているため、どんな電波でも増幅できるというわけではありません。特に、各部屋にテレビを設置するなど、複数のテレビに電波を分配する際には定格出力が大きいものを選んでください。

衛星放送への対応

地デジ放送だけ視聴するのであれば、衛生放送に対応していなくても問題ありませんが、BSやCSも見たい場合は全対応のブースターを選びましょう。ブースターには、地デジ用と旧BS用、新4K8K対応BS用の3種類がありますが、それぞれの状況に応じて適切なブースターを使用することが大切です。また、電波が弱い場合は、アンテナの設置場所を変えたり、素子数の高いアンテナを選んだりすることもひとつの改善方法です。

  • 地デジ用

各部屋に電波を分けた時など、正常に地上デジタル放送を見るための受信レベルを確保できない場合に使用する機器です。正常に電波が受信できないと、ノイズが発生したり、画面が映らなかったりします。

  • 旧BS用

BS放送の電波を増幅する機器ですが、地デジ放送の電波も増幅する混合ブースターを使用し、1台で両放送の電波を増幅することもできます。ただし、地デジブースターとは性能も異なるため、アンテナ工事の際には注意が必要です。

  • 新4K8K対応BS用

これまでのBSアンテナの電波に加え、2018年より本格的に実用放送された4K8K放送の電波を増幅するための機器となります。これまでのブースターとは性能も価格も異なる点が特徴です。既存のブースターとの相性にも注意が必要となり、新たに4K8K対応のBSアンテナを設置しても、旧BS用のブースターを使用している場合には、4K8K放送の電波を増幅することができません。

動作利得

動作利得とは、電力を大幅に跳ね上げるブースターの性能のひとつで、db(デシベル)といった単位であらわされる数値のことです。たとえば、20デシベルの場合、ブースターの電力は100倍となり、40デシベルでは1万倍となります。そのため、何デシベルにするかでブースターの性能がまったく違うものになると言えるでしょう。

動作利得が大きい方が電力が跳ね上がり電波も強くなるため、テレビの映りは良くなるので、ご家庭の電波状況にあったものを選ぶようにしてください。ただし、動作利得を上げてもブースターには電力の上限があるため、限界があることも覚えておきましょう。

雑音指数

雑音指数とは、増幅回路における信号と雑音の比率の値のことで、音に対して雑音の混じり度合いと考えるとわかりやすいです。かんたんに言えば、電波中にどれだけ雑音が含まれているかを指数で表したものであり、値が低く、より1に近いものが高性能を示しています。表示上で1を下回ることはありません。ブースターを設置することで電波が増幅されますが、それと同時に電波内の雑音も増幅されていくので注意が必要です。そのため、ブースターを選ぶ際にはなるべく雑音指数の低い物を選ぶことをおすすめします。

テレビアンテナのブースターで注意すべきこと

適切な製品選びや設置するかしないかの判断がむずかしいブースターですが、それ以外にも組み合わせや対処を誤ると危険を伴うケースが存在します。

安易に出力レベルを上げると危険

テレビの映りが悪いからといって、安易に複数のブースターを設置し、出力レベルを上げてはいけません。電波が必要以上に増幅され余計に悪化してしまう可能性や、負荷がかかりすぎて機材が故障する可能性も出てきます。対処する際には、適正レベルまで増幅された信号の入力が必要です。

「異常発振」に気を付けよう

異常電波が発生して使用中の電波が混信する「異常発振」が起きる可能性もあるため、性能の悪いケーブルを使用したり、入出力ケーブルを一緒にして束ねる場合には注意してください。これはアンテナとブースターを近づけたときに、正しい方向へ信号が流れなくなることが原因です。入出力ケーブルをまとめて束ねず、アンテナとブースターは必要以上に近づけないことを心がけてください。また、4K8K放送では高帯域まで電波を使用しているため、異常発振が起きると特に負荷がかかりやすく、テレビ本体やアンテナに障害を与える可能性が高いので気を付けましょう。

ブースター設置の判断は専門業者に任せるのが安心!

ブースターの役割は電波を増幅させるといったシンプルなものですが、それぞれのご家庭の電波状況によっても異なるため、どの選び方が正しいとは一概には言い切れず、ブースター選びは難しいものです。さらに、さまざまなメーカーがバリエーション豊富な製品を販売しており、その中から適切なものを選ぶ必要があります。

電波は弱すぎても強すぎても視聴の妨げになってしまうので、現在の電波状況を理解し足らない部分をブースターで補うことが重要です。また、ブースターを使用するかしないかでアンテナ工事費用は大幅に変わってきます。ブースターはシンプルな機能の製品となりますが、適切な設置には専門的な知識が必要となることが多く、本当にブースターの設置が必要なのか判断がむずかしいため、専門業者に任せるのが安心です。ブースターの設置を検討する場合には、電波発生器や電波測定器を使ってブースターが必要であるかを正確に判断できるプロに相談しましょう。